福島県会津地域は山に囲まれ、冬は雪に覆われる。住民の出入りが都会のようには多くない当地に、「会津の三泣き」という伝承がある▼この地に住み始める人は、まず人付き合いの難しさに泣く。やがて親しくなると、周囲の温かな心遣いや人情の深さに泣く。そして別の地に移る際は、恩を忘れがたく、離れたくないと泣く。「三泣き」は、心の交流が深まるほどに、涙の“意味”が変わることを教えている▼ある婦人部員は、母の介護に苦悩していた。日々の労作業に加え、認知症の母が婦人の顔を認識できなくなったことに打ちのめされた。“こんなにつらい日々がいつまで続くのか”と御本尊の前で泣き通しだった▼だが、祈る中で気付いた。“母も題目だけは忘れていない”。現状から逃げたい一心の唱題から、母の幸せを祈る姿勢に変わった。「母のおかげで、自身の信心を正してもらえた」と婦人は感謝の涙を流した▼後年、母は婦人に感謝を告げながら、安らかに霊山へ。その際、母と広布草創を共にした同志から声を掛けられた。「『大変だったね』という同情ではなく、『本当にありがとう』という言葉で、心に染みました」。そう語る婦人の目には、これからも心の中の母と広布に生きる決意の涙があった。(城)