“世界のムナカタ”と呼ばれた版画家・棟方志功は青森に生まれた。修業のため21歳で上京し、再び故郷の土を踏んだのは5年後のこと。権威ある美術展での入選を報告するためだった▼家では兄弟姉妹、親類が集まり、祝福してくれた。「久しぶりに聞く青森弁は、うつくしい音楽のようにわたくしを和ませました」(『板極道』中公文庫)。その後、しばらく青森にとどまり、友人らと旧交を温め、大自然を堪能した。この時の思い出を、棟方は生涯忘れなかった▼初代会長の牧口先生は大著『人生地理学』の中で、郷土を「自己の立脚地点」と述べている。そこには“不可思議な力”があり、人が国家・世界など大舞台で活動するための源になるという▼その“不可思議な力”はどこから生まれるのか。牧口先生は郷土の自然や家族・友人によって人の精神は啓発され、知力が育まれると指摘する。特に“慈愛、好意、友誼、親切、真摯、質朴等の高尚な心情の涵養は、郷里でなければ容易にはできない”と。そして牧口先生もまた、誰より故郷を大切にする一人であられた▼黄金週間が始まった。休暇を利用して帰郷する方も多いだろう。普段なかなか会えない友人や親戚と交流する絶好の機会でもある。心豊かに友情と仏縁を広げよう。(値)