作家・吉川英治氏の信条は「生涯一書生」。世間が「大家」ともてはやそうと、謙虚さを失わなかった。さらに氏は言う。「一生一書生である者には、『疲れ』とか『倦む』とかいったことはない。およそ、そうした類の言葉には絶縁である」(『吉川英治全集52』講談社)▼完結した生涯最後の作品は『私本太平記』。この新聞小説の連載開始の前年まで、週刊誌上で7年にわたり『新・平家物語』の筆を執り続けている。大衆の心に響くものを求め、最後まで書き続けた生涯だった▼池田先生の小説『新・人間革命』の連載が、あす「6000回」を迎える。この連載回数は「日本一」の記録を更新し続けている。同志への激励や世界の識者との対話など、激務の合間を縫って重ねた執筆は、400字詰めの原稿用紙で、実に1万枚以上。まさに“大山”を仰ぎ見るような偉業である▼起稿は1993年8月6日、先生が65歳の時。70歳の時には「新聞の連載小説は過酷な作業である。しかし、わが使命なれば力がこもる」とつづった。89歳の今も「日本一」のペンの闘争は続いている▼私たちも「生涯一弟子」として、朗らかに「正しい人生」を求めて歩みたい。師匠が魂魄をとどめる創価の民衆の大叙事詩を学びつつ。(芯)