小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 大山 三十五 2017年2月11日

スポンサーリンク

 法悟空 内田健一郎 画 (5995)

 山本伸一は、四月二十四日付の「聖教新聞」一面に所感「『七つの鐘』終了に当たって」と題する一文を発表した。
 これは、学会の首脳幹部と検討して、決まったことであった。
 彼は、学会が目標としてきた「七つの鐘」の終了にあたり、苦楽を分かち合って戦ってくれた同志へ、感謝を伝えるとともに、新しい出発への心の準備を促したかった。
 「私どもは、初代牧口会長以来、広宣流布の大道に向かって、七年ごとのリズムを合言葉にして進んでまいりました。ここに来る五十四年(一九七九年)五月三日を中心に、ついに『七つの鐘』の総仕上げともいうべき記念の日を迎えることができました」
 そして、慈折広布の聖業に不屈の奮闘を重ねてくれた同志に、深甚の敬意を表した。
 「戸田前会長逝いて二十一年、私もおかげさまで会長就任から満十九年、あしかけ二十年に及ぶ長き歳月を、皆様方と共に苦難と栄光の歴史を綴り、今日にいたりました。
 浅学非才な私を、陰に陽に、守り支えてくださり、広布のために走りに走ってくださった妙法の勇者の皆様方に、重ねてここに謹んで感謝いたします。この貴重な足跡は永遠の生命の宝となることを確信していただきたいのであります。
 もとより、私どもは、末法の凡夫の集いであります。幾多の試行錯誤もありました。前進もあり、後退もありました。しかし、常に波浪を乗り越え、上げ潮をつくり、その潮流を、立正安国と人類の幸福と平和のために安定ならしめる努力を傾けてきたのであります」
 伸一には、断固たる確信があった。
 “日蓮大聖人の仰せ通りに、死身弘法の実践をもって広宣流布の道を切り開いてきたのは誰か――それは創価学会である。私と共に身を粉にして戦ってくれた同志である!
 まさに、創価の旗のもとに地涌の菩薩が雲集し、大聖人の御遺命たる『末法広宣流布』を現実のものとしてきたのだ。学会なくば、大聖人の言説も虚妄となるのだ!”