法悟空 内田健一郎 画 (6467)
二〇〇一年(平成十三年)「新世紀 完勝の年」が晴れやかに明けた。「希望の二十一世紀」の、そして、「第三の千年」の門出である。山本伸一は「聖教新聞」の新年号に和歌を寄せた。
「新世紀 新たな舞台は 世界かな
胸の炎の 決意も新たに」
一月二日、彼は、七十三歳の誕生日を迎えた。伸一が七十代のテーマとしていたのは、「世界広布の基盤完成」であった。
五月三日、アメリカ創価大学オレンジ郡キャンパスが、待望の開学式を迎えた。人類の平和を担う、新しき世界市民を育む学舎が誕生したのだ。学長に就任したのは、創価高校・創価大学一期生の矢吹好成であった。
伸一は、万感の思いをメッセージに託し、「『文化主義』の地域の指導者育成」「『人間主義』の社会の指導者育成」「『平和主義』の世界の指導者育成」「自然と人間の共生の指導者育成」を「指針」として示した。
九月十一日のことであった。アメリカで、四機の旅客機がハイジャックされ、そのうちの二機はニューヨークの世界貿易センタービルに、別の一機は国防総省に突っ込むという事件が起こった。「アメリカ同時多発テロ事件」である。
死亡者は約三千人、負傷者も六千人を超える悲惨な事態となった。アメリカ政府は、イスラム過激派の犯行と断定し、「テロとの戦い」を宣言。首謀者らが潜伏していると見られるアフガニスタンへの軍事攻撃を開始した。また、その後、ヨーロッパなどで、自爆テロが頻発していくことになる。
どのような大義を掲げようと人びとの命を奪うテロは、絶対に許されるものではない。
このテロ事件では、アメリカSGIも直ちに緊急対策本部を設置し、救援活動の応援、義援金の寄託など、できうる限りのことを行った。また、宗教間対話にも積極的に取り組んでいった。平和、戦争反対、暴力をなくす――これは教義を超えた人間の共通の道であり、宗教は、本来、そのためにこそあるのだ。