法悟空 内田健一郎 画 (6452)
自身の信ずる宗教に確信と誇りをもち、その教えを人びとに語ることは、宗教者として当然の生き方である。しかし、そこには、異なる考え、意見に耳を傾け、学び、より良きものをめざしていこうとする謙虚さと向上心がなければなるまい。また、宗教のために、人間同士が憎悪をつのらせ、争うようなことがあってはならない。
現代における宗教者の最大の使命と責任は、「悲惨な戦争のない世界」を築く誓いを固め、人類の平和と幸福の実現という共通の根本目的に立ち、人間と人間を結んでいくことである。そして、その目的のために、各宗教は力を合わせるとともに、初代会長・牧口常三郎が語っているように、「人道的競争」をもって切磋琢磨していくべきであろう。
SGIは、この「SGI憲章」によって、人類の平和実現への使命を明らかにし、人間主義の世界宗教へと、さらに大きく飛躍していったのである。
翌一九九六年(平成八年)も、山本伸一の平和旅は続いた。三月に香港を訪問し、五月末から七月上旬には、北・中米を訪れた。
その折、アメリカでは、六月八日にコロラド州のデンバー大学から、名誉教育学博士号を授与されている。
十三日には、ニューヨークのコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで、「世界市民」教育をテーマに講演し、訴えた。
――世界市民とは、生命の平等を知る「智慧の人」、差異を尊重できる「勇気の人」、人びとと同苦できる「慈悲の人」と考えられ、仏法で説かれる「菩薩」が、その一つのモデルを提示している。教育は「自他共に益する」菩薩の営みである。
翌日は、ニューヨークの国連本部を訪れ、明石康国連事務次長をはじめ、各国の国連大使らとの昼食会に出席して意見交換した。
伸一は、二十四日からキューバ文化省の招聘で、同国を訪問することになっていた。彼は果敢に行動した。行動こそが時代を開く。