小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 九十五 2018年7月18日

 法悟空 内田健一郎 画 (6425)

 アタイデ総裁は、静かだが、深い思いのこもった口調で、山本伸一に切々と訴えた。
「私は、もうすぐ百歳を迎えます。これまで生きてきて、これほど『会いたい』と思った人は初めてです。
会長は、偉大な使命のある方です。人間学と人間性の人であり、精神の指導者です。
会長の人生には、すべて意味がある。世界の命運は、会長の行動とともに次第に大きく開かれてきました。人類の歴史を転換している方です。
自らの行動で構想を現実化し、具体化してこられたことに、私は敬服します」
伸一は、総裁の自分への期待には、「世界人権宣言」の精神を、なんとしても現実のものにしなければならないという、強い心が込められていることを感じた。
総裁は、伸一を、見つめながら語った。
「『新しい世紀』が、まもなく、やってきます。それは、ブラジルと日本、そして世界にとっての『新しい時代』が、やってくることを意味するのではないでしょうか」
「そうです。『新しい時代』をつくるために総裁は戦ってこられた。私も同じです。目的は、人類が幸福に生きられる『新しい時代』を開くことです」
伸一が、答えると、総裁は、微笑みを浮かべ、そして、力強い声で言った。
「『言葉』を意味するラテン語の『ウェルブム(verbum)』とは、また、『神』を意味します。私たちは、この崇高なる『言葉』を最大の武器として戦いましょう」
二つの魂は、強く、激しく響き合った。
伸一は、アタイデ総裁との会談に引き続いて、ブラジル文学アカデミー在外会員(外国居住者)の就任式に出席した。
同アカデミーは、ブラジルが王制から共和制に移行したあとの一八九七年に、祖国ブラジルを「知の光」で導いていこうとの熱願のもとに創立された。四十人の国内会員と二十人の在外会員から構成されており、いずれも終身会員である。

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