小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 九十四 2018年7月17日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6424)

 十一日、山本伸一は、リオデジャネイロ連邦大学での名誉博士号の授与式に出席した。
謝辞のなかで彼は、この日が恩師・戸田城聖の生誕記念日であることに触れ、師の哲学について語った。
「私は恩師から、“誰人であれ、平等に、内なる生命の最極の宝を開いていくことができるという哲学”を学びました。また、“誠実なる対話を積み重ね、民衆の連帯を広げゆく平和の王道”を託されました。そして“『民衆のため』『人間のため』という慈悲の一念に徹しゆく時、智慧は限りなく湧いてくるという人間学”を受け継いだのであります。
恩師は、戦後間もなく『地球民族主義』という理想を青年に提唱いたしました。当時は、全く評価されませんでしたが、民族紛争の激化に苦しむ現代世界は、この『共生の道』を志向し始めております」
彼は、わが師の偉大さを世界に宣揚したかった。また、自分を育んでくれた恩師に、この名誉博士号を捧げたかったのである。

翌十二日、伸一は、リオデジャネイロのブラジル文学アカデミーを訪れ、アタイデ総裁と会談した。ここでは、以前から話が出ていた総裁との対談集『二十一世紀の人権を語る』の発刊について合意がなされた。
対談の進め方としては、まず伸一の方で、いくつかの質問事項を用意して、渡すことになった。
総裁は語った。
「嬉しいことです。人権の問題について、ここまで理解してくださっている会長と対話できるとは。確かに『世界人権宣言』は、発表されました。しかし、その精神を、最も明確に、現実の行動の上に翻訳し、流布してくださっているのは会長です。作成した人びと以上の功績です。人間は『行動』です。とともに『思想』が大事です。二人で対談集を完成させましょう」
伸一は、総裁の、この大きな期待に応えねばならぬと、決意を新たにしたのである。