名字の言

〈名字の言〉 2018年6月22日  汗ばむ陽気のある日、路線バスで、母親に背負われた赤ちゃんがぐずりだした。

 汗ばむ陽気のある日、路線バスで、母親に背負われた赤ちゃんがぐずりだした。一緒にいた幼い兄が「いないいないばあ」を繰り返してあやすが一向に泣きやまない。ついに兄まで泣きだした▼「次で降りますから」と平謝りの母親。すると隣の婦人が「暑いんじゃない?」と、扇子で風を優しく送り始めた。すると赤ちゃんはおとなしくなり、安心した兄も泣きやんだ。乗客らは口々に「偉かったぞ、お兄ちゃん」と。周囲の心遣いに母親は目を潤ませた。居合わせた皆の心が温かくなった▼誰でも日々の中で思わぬ窮地に陥ることがある。そこから脱しようと懸命な人を、“応援したい”という気持ちが人間には備わっているものだ▼ある離島の音楽隊が演奏会を企画した。楽団は少人数で実力もさまざま。一人の隊員は何度練習しても、学会歌の冒頭でシンバルを大音量で鳴らすタイミングを外した。全員で何十回と練習に付き合うが、どうしてもうまくいかない。周囲も励ましの声を掛け続けたものの結局、仕上がらなかった▼ところが本番では見事に成功。皆が涙をこらえて奏で続けた。「彼が成功した理由は分からない。ただ皆が演奏の成功、失敗以上に大切なことを学んだ」と関係者。真剣の心は人の心を打ち、感動を倍加させる。(城)

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