小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 四十五 2018年5月18日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6375)

 予言者の語った二つの道の一つ目は、「圧政によって王座を固めること」であった。そうすれば、王権の継承者として、強大無比な権力が与えられ、その恩恵に安住できる。
そして、二つ目は、民に自由を与えることであり、それは「受難の厳しい道」である。
なぜか――予言者は、そのわけを語る。
「あなたが贈った『自由』は、それを受け取った者たちのどす黒い、恩知らずの心となって、あなたに返ってくるからです」
「自由を得た人間は隷属から脱却するや、過去に対する復讐をあなたに向けるでしょう。群衆を前にあなたを非難し、嘲笑の声もかまびすしく、あなたと、あなたの近しい人びとを愚弄することでしょう。
忠実な同志だった多くの者が公然と暴言を吐き、あなたの命令に反抗することでしょう。人生の最後の日まで、あなたをこき下ろし、その名を踏みにじろうとする、周囲の野望から逃れることはできないでしょう。
偉大な君主よ、どちらの運命を選ぶかは、あなたの自由です」
為政者は、熟慮し、七日後に結論を出すので、待っていてほしいと告げる――。
アイトマートフが寓話を話し終え、帰ろうとすると、ゴルバチョフは口を開いた。
「七日間も待つ必要はありません。七分でも長すぎるくらいです。私は、もう選択してしまったのです。私は、ひとたび決めた道から外れることはありません。ただ民主主義を、ただ自由を、そして、恐ろしい過去やあらゆる独裁からの脱却を――私がめざしているのは、ただただこれだけです。国民が私をどう評価するかは国民の自由です……。
今いる人びとの多くが理解しなくとも、私はこの道を行く覚悟です……」
アイトマートフが山本伸一に送った、この書簡には、ペレストロイカを推進するゴルバチョフの、並々ならぬ決意があふれていた。
保身、名聞名利を欲する人間に、本当の改革はできない。広宣流布という偉業もまた、「覚悟の人」の手によってこそ成し遂げられる。