小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 四十八 2018年5月22日

 法悟空 内田健一郎 画 (6378)

 山本伸一もまた、一九八五年(昭和六十年)十月には、体調を崩し、精密検査のために大学病院に入院しなければならなかった。
青春時代に胸を患い、医師からは三十歳まで生きられないだろうと言われてきた体であったが、全力疾走の日々を送ってきた。会長辞任後も、世界を回り、以前にも増して多忙を極めた。さらに、会長の秋月英介が、一時期、体調を壊したこともあり、皆を支えるために、伸一は一段と力を注いできた。
彼は、この時、師の戸田城聖が亡くなった五十八歳に、間もなくなろうとしていることを思った。また、自分のあとに会長となった十条潔も、五十八歳で他界したことを振り返りながら、決意を新たにした。
“私には、恩師から託された、世界広布の使命がある。そのためには、断じて倒れるわけにはいかない。師の分までも、生きて生きて生き抜いて、世界広宣流布の永遠の基盤をつくらねばならない!”
伸一は、健康管理に留意することの大切さを改めて感じながら、新しき広布の未来を展望するのであった。
人生は、宿命との容赦なき闘争といえる。
愛する人を失うこともあれば、自らが病に倒れることもある。あるいは、家庭の不和、子どもの非行、失業、倒産、生活苦……。これでもか、これでもかというほど、怒濤のごとく、苦難は襲いかかってくる。だからこそ、信心なのだ。自らを強くするのだ。信心で乗り越えられぬ宿命など、断じてない。
苦難に負けず、労苦を重ねた分だけ、心は鍛えられ、強く、深くなり、どんな試練をも乗り越えていける力が培われていく。さらに、人の苦しみ、悲しみがわかり、悩める人と共感、同苦し、心から励ましていくことができる、大きな境涯の自分になれる。
また、苦難に挫けることなく、敢然と戦い進む、その生き方自体が、仏法の偉大なる力の証明となっていく。つまり、広宣流布に生き抜く時、宿命は、そのまま自身の尊き使命となり、苦悩は心の財宝となるのだ。

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