島根県の足立美術館が、米国の専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の日本庭園ランキングで15年連続の第1位となった。国内900カ所以上の庭園から選ばれ、「細部にまで維持管理がされた造園の大傑作」と絶賛される▼近現代の日本画コレクションを誇る同美術館も、48年前の開館から数年は来場者はわずかだった。苦境を打開しようと、創立者の足立全康氏は敷地面積を倍増。“建物も庭も立派な美術館”を目指した(『庭園日本一 足立美術館をつくった男』日本経済新聞出版社)▼現在、5万坪の敷地に六つの庭園がある。氏は「庭園もまた一幅の絵画である」との信念で、一木一草から白砂の一粒に至るまで心血を注いだ。氏の逝去後も、美術館職員は毎日、落ち葉拾いや庭掃除を欠かさない▼身の回りにある多くのものは、庭に限らず、人知れぬ努力の積み重ねに支えられているものだ。機能や美しさが保たれている陰には、必ず手入れに心を尽くす人がいる▼“当たり前”と思うと見えなくなるものがある。各地の学会の会館、個人会場もまた、陰で支える存在があってこそ。会場提供者、会館守る会、一日会館長はじめ、全ての役員の献身に感謝しつつ、わが“地域の宝城”を真心で荘厳したい。