小欄での紹介も恒例となった「太陽会万葉集」。都内のある地域の太陽会(平日の昼間に活動できる壮年の集い)の友が年1回、自身の思いを歌に詠み、それを編さんしたものだ。今年の第11集には94人の作品が収められている▼「賜りし 白檀の香 命に滲む 断じて勝つと 師匠に誓う」とは、昨年、重い病気に襲われた79歳の友。闘病生活は今も続くが、心は負けない。「題目第一で前進します。歌に込めた決意は、どんな病も壊せません」▼今回の最高齢の98歳は「九十八 耐えてしのいだ 幾山河 目指す峠は 光り輝く」と。旧習深い離島の“信心の一粒種”で、弘教は150世帯に及ぶ。さらに、師弟の道を貫く89歳は「歳重ね 生命燃やして 師と共に」、青年の心で進む82歳は「未来児と 共に輝く 壮年部」と詠んだ▼「歌う」には「うったう、訴える」意味がある。作家の石牟礼道子さんは、漢字学の大家の見解を通し、「人間の力では及ばないものに訴える、究極的には訴えるしかない、歌うしかないという、そういう魂の呼びかけとして言葉が汲み上げられたんではないか」と(『蘇生した魂をのせて』河出書房新社)▼太陽会の万葉集から聞こえる「魂の呼びかけ」――多くの人に伝えたい「宝の言葉」である。(川)