名字の言

〈名字の言〉 2017年3月28日

スポンサーリンク

 地域の俳句会で「春の季語」を学んだことがある。梅や桜は言わずもがなとして、驚いたのは「凧」である▼正月に揚げるイメージから、冬の風物詩とばかり思っていた。そもそもは江戸時代に春の行事として流行したものらしい。凧のほかに風車、風船、石鹼玉も春の季語に入るそうだ。いずれも「風」と遊ぶ玩具である。暖かさを増した風に誘われ、子どもたちが外遊びに興じるのどかな光景に、昔の人々は春の訪れを重ねたのだろう▼季節の移ろう日本では、風の変化を鋭敏に読み取る感性が磨かれるのかもしれない。「風」の語が、自然現象にとどまらず、「世の動き」「形勢」等の意味で使われるのも興味深い▼同じ「風」でも捉え方は人それぞれ。少々の「向かい風」に怯む人もいれば、鳥や飛行機のように飛翔の好機とする人もいる。向かい風であれ、追い風であれ、生かせるかどうかは自分次第。どうせなら風を利用して勢いづけたい。仏典に登場する伝説上の虫「求羅」は大風に吹かれるほど、その身が倍増するという▼ブラジルの作家ベリッシモいわく「変化の突風が吹く時、防壁を立てる人もいれば、風車を創る人もいる」と。“攻め”の姿勢こそ、あらゆる風を楽しむための急所に違いない。信仰者とは「戦う人」の異名である。(之)