「本気の夏、100回目。」――キャッチフレーズの通り、皆が本気。だから、見ていて感動する。語り継がれるような名勝負が生まれる。甲子園で第100回全国高校野球選手権記念大会の熱戦が続く▼硬式野球部に所属する、ある高等部員は、一度もレギュラーになったことがない。だが、決して練習を休まなかった。ある日、母が「なかなか試合に出られないわね。もう、やめたら」と、つい口にしてしまった。答えた彼の口調は、いつにも増して強かった。「レギュラーだけが選手ではないんや」▼「9人が安心して全力でプレーできるのも、陰で働くみんながいるからやろ。その陰の場で、僕はいっぱい学ぶことがあるんや」と。彼にもまた、彼だけの「本気の夏」があった▼タイミングは明らかにアウトでも、最後まで全力疾走する。敗色濃厚だとしても、声を振り絞って応援する。全身で喜び、思いっきり泣く。勝つという目標に向かっての挑戦一つ一つ、それ自体の中に人間的な成長という価値があることを、球児らは教えてくれている▼具体的な目標を立て、その達成を諦めない――この地道な繰り返しの中にこそ、実は最も充実した人生の“黄金の時”は輝く。「本気」で挑戦の一歩を踏み出せば、黄金の時は誰にでも訪れる。(鉄)