サッカー界の歴史に残る劇的な一戦だった。現在、開催中のUEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ。世界一レベルの高い、伝統的な大会でのことである▼決勝トーナメント1回戦。スペインの名門、FCバルセロナは、窮地に追い込まれていた。初戦で0対4の大敗。2戦目では3点を先制するものの、後半17分に1点を返される。ルール上、勝ち進むには、あと3点が必要という厳しい状況▼だが選手たちは諦めていなかった。超一流のスターたちが必死の形相でボールを追う。試合終了間際、立て続けに3点を奪い、大逆転。スタジアムは歓声に揺れた▼実業家・松下幸之助氏の講演会でのこと。一人の中小企業の経営者が、どうすれば松下さんの言う経営ができるのかと質問した。氏は答える。“まず大事なのは、やろうと思うこと”。その時の聴衆の一人で、後に世界的企業に成長した会社の経営者は、「“できる、できない”ではなしに、まず、“こうでありたい。おれは経営をこうしよう”という強い願望を胸にもつことが大切だ」と感じたという(『エピソードで読む松下幸之助』PHP新書)▼勝てるかどうかではなく、まず勝つと決める。最後まで諦めない。大逆転のドラマは、わが一念から始まる。(速)