一番好きな料理は何ですか――そう問われた少年部員は「お母さんのみそ汁です」と答えた。あるテレビ番組の企画である▼大手菓子メーカーの協力のもと、選抜された8人の子どもたちがアイデアを出し合い、「人の心をつかむ商品を生み出そう」というもの。彼は「みそ汁味のポテトチップス」を思い付く▼題目をあげる中、一つの記憶がよみがえったという。幼い頃は病弱で入退院を繰り返していた。野菜が嫌いな彼のため、母親はさまざまな野菜を細かく刻んで、みそ汁に入れてくれた。“元気になって、いつも笑顔でいてほしい”と。そんな母の真心に少年は気付く。「食べたらホッとする。大切な人を思い出すような味にしたい」。彼の提案は皆の心を動かし、最終選考に残った▼日蓮大聖人の御書に、新尼御前から甘海苔一袋が届けられたことに対する御返事がある。身延の地にあった大聖人にとって、それは故郷・安房の国の潮の香りと“懐かしい味”を伝えるものだった。亡き父母を思い出し、涙を抑えることができないと認められている(904ページ)▼日々の食事は、たとえ簡素であっても、大人が愛情を込めたものは、子にとって最高の“体と心の栄養”になり、人生を支える力となろう。心を育てるものは心である。(之)