小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 暁鐘 三十六 2017年10月13日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6197)

 四日の夕刻、山本伸一は、宿舎のホテルの会議室で、学生をはじめ、青年の代表ら約五十人と信心懇談会を開催した。
メンバーの質問に答えながら彼は、指導、激励を重ねた。そのなかで強調したのは、制度の改革といっても、自身の生命の変革が不可欠であるということであった。
立派な制度をつくっても、それを運用していくのは人間であり、肥大化していくエゴイズムを制御する人間革命の哲学を確立しなければ、本当の意味での社会の繁栄はない。
彼は青年たちに、生命の世紀を開く“人間革命の旗手”として立ってほしかったのだ。
さらに伸一は、イタリアは青年のメンバーが多く、その両親などから、結婚観についても、ぜひ語ってほしいとの要請があったことを踏まえ、この問題に言及していった。
「結婚は、自分の意思が最重要であるのは言うまでもないが、若いということは、人生経験も乏しく、未熟な面もあることは否定できない。ゆえに、両親や身近な先輩のアドバイスを受け、周囲の方々から祝福されて結婚することが大切であると申し上げたい。
また、結婚すれば、生涯、苦楽を共にしていくことになる。人生にはいかなる宿命があり、試練が待ち受けているか、わからない。それを二人で乗り越えていくには、互いの愛情はもとより、思想、哲学、なかんずく信仰という人生の基盤の上に、一つの共通の目的をもって進んでいくことが重要になる。
二人が共に信心をしている場合は、切磋琢磨し、信心、人格を磨き合う関係を築いていただきたい。もし、恋愛することで組織から遠ざかり、信心の歓喜も失われ、向上、成長もなくなってしまえば、自分が不幸です」
人生の荒波を越えゆく力の源泉こそ、仏法である。崩れざる幸福を築く道は、学会活動の最前線にこそある。広布のために流す汗は、珠玉の福運となり、その一歩一歩の歩みが、宿命を転換し、幸と歓喜の人生行路を開いていく――ゆえに伸一は、信仰の炎を、絶対に消してはならないと訴えたのである。