名字の言

〈名字の言〉 2018年7月13日  イタリア南部のナポリは、古代ローマ帝国時代から地震や火山噴火などが繰り返されてきた。

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イタリア南部のナポリは、古代ローマ帝国時代から地震や火山噴火などが繰り返されてきた。ナポリ湾に浮かぶイスキア島の町は、135年前の7月に起こった地震で、ほぼ全壊したという▼この地震でイタリアの歴史学者であるベネデット・クローチェは父と母、妹を失う。当時17歳だった彼は、後に真情をこう述べている。「私から希望の喜ばしさをいっさい奪って」しまったと(『十九世紀ヨーロッパ史』創文社)▼災害は形あるものを破壊し、奪い去る。だが、心まで奪うことはできない。父のいとこに引き取られたクローチェは、一時は虚無感にさいなまれた。だがローマの図書館に通い始め、学問の師と触れ合う中で、哲学と歴史の研究に目覚めた▼今回の「平成30年7月豪雨」で、以前にお会いした岡山県津山市の友に連絡した。大雨で不安が増す中、町内会の方や学会同志など、多くの人が連絡をくれた。“こんなにも心配してくれる人がいる”。そう思うことで強くなれたという▼「どんなことがあろうと、生きてさえいれば、信心はできる。必ず変毒為薬できます」とは、東日本大震災で津波の被害を受けた東北の友に聞いた言葉だ。祈ること。声を掛けること。被災された方々のため、一人一人ができることをしたい。(芯)