その場で輝け! その場を変えよ
「心」を変えれば、「環境」も変わる。仏法でも「依正不二」「一念三千」と説く。
周りを見渡せば、獄中にも多彩な人材が集まっていた。いつまでも嘆いていてもしかたがない。女史は思った。
″それぞれの持ち味を生かして、学び合う機会をつくろう。学校をつくろう″
″あの人は化学の講義ができるだろう。あの人には医学の講義をしてもらおう″
女史自身は、見事な歌声を披露した。ある時は、よく響く澄んだ声で、プーシキンの詩を朗読した。皆、感動した。勇気がわいてきた。
暗く閉ざされた牢獄。だからこそ、静かに勉強できる学校となった。芸術を存分に味わう劇場ともなった。心一つで何でも変えられる。
″さあ、今いるこの場所で、楽しく有意義な一日一日を送ろう″と。
本当に賢明な人は、どんな状況でも価値を創造する。
いわんや仏法では「心は工(たくみ)なる画師(えし)の如し」と説く。「心」は名画家のごとく、一切を自在に描き出していく。したがって、人生そのものが、「心」の描く「名画」である。「心」が創り上げる芸術である。
また、指導にあたっても、こちらの「心」次第で、いくらでも美しいドラマを描いていける。おなかがすいている人にはパンをあげよう。パンがなければ″言葉のごちそう″だけでもあげよう、と。顔色の悪い人、体が心配な人には、心が軽くなり、「よし健康になろう」と希望を出せるような話をしてあげる。
会ったら「何か」を与えなければいけない。喜びを、勇気を、希望を、安心を、また哲学を、知恵を、展望を――何かを与えてあげることである。
また、花を見る余裕もない女性がいる。うちに帰っても、花を見て楽しむどころか、お母さんに文句だけ言って、寝てしまう。そういう人には、ちょっと角度を変えて、美しい花や芸術に心が向くようにしてあげる。それだけで、ぱっと開ける場合がある。
わが「心」を絵筆のごとく自在に使える名指導者であっていただきたい。