各地で開催中の「絵本とわたしの物語展」。会場には、絵本が生まれた時代や当時の暮らしぶりが再現され、好評を博している。手に取って読める約250種600点の作品の中には大人が楽しめるコーナーも▼近年、絵本は子どもだけのものではなくなった。多くの大人向け絵本が出版され、中高生や高齢者の読み聞かせの実践例も注目を集めている▼静岡のある高校の野球部は県大会の3、4回戦止まり。そこで練習に加え、新たな試みとして「絵本の読み聞かせ」を始めた。当初は皆、戸惑ったが、読んだ後は気持ちが伸びやかになり、集中力も増した。イメージトレーニングの力も養われ、平常心で試合に臨めるようになったチームは、県大会で準優勝という快挙を(村上淳子著『本を読んで甲子園へいこう!』ポプラ社)。後に甲子園出場も果たした▼もちろん、読み聞かせや読書だけで技術は向上しない。だが、内なる創造性や主体性が引き出され、飛躍のきっかけになったのだろう。絵本セラピスト協会の岡田達信代表は本紙で「いつの間にか癒やされたり、何かにハッと気付かされたりします」と、絵本の効果を強調していた▼多忙な時ほど、優れた本や絵本に触れ、みずみずしい感受性を育みたい。きょう30日は「絵本の日」。(仁)