法悟空 内田健一郎 画 (6455)
講演で、山本伸一は、「二十一世紀に始まる新しい千年には、『人間の尊厳』を基盤とした“希望”と“調和”の文明を、断固として築いてまいりたい」と、思いを披瀝した。
そして、そのために、三つの「架橋」、すなわち結び合う道を示した。その第一が、人間と社会と宇宙を結ぶ詩心の薫発による「生の全体性」の回復。第二が、他者の苦悩に同苦しつつ、「人間」と「人間」を結ぶこと。第三が、教育に力を注ぎ、未来へ希望の橋を架けることであった。
この夜、伸一は、フィデル・カストロ国家評議会議長と、革命宮殿で約一時間半にわたって会見した。軍服姿で知られる議長だが、スーツにネクタイを締めて、笑顔で迎えてくれた。平和と友好の意志を感じた。
話題は、後継者論、人材育成論、政治・人生哲学、世界観など多岐にわたった。だが、一貫して、「対話」と「文化」の力が二十一世紀の平和にとって、極めて大きな要素となることを確認する語らいとなった。
伸一は、キューバも世界も、未来は「教育」にかかっていると力説した。また、SGIの運動は、どこまでも平和を基調とし、体制を超えた、「人間」を根本とした国際的運動であることを述べ、それは「すべての人間は平等に尊厳である」とする仏教思想の必然の帰結であり、その具体的な表現であると訴えた。
一方、カストロ議長は、一行を心から歓迎し、相互理解を図るために、キューバと日本の交流を積極的に行いたいと明言した。
会見のあと、カストロ議長に創価大学から名誉博士号が授与された。謝辞に立った議長は、「今回のSGIの皆さまのキューバ訪問は、平和に貢献する人間主義を主張するうえで、重要なことと思っています」と強調。また、日本は、資源も少なく、土地も狭いうえに、地震や台風などもあるなか、国を発展させてきたと評価し、こう話を結んだ。
「日本の方々は、『人間に不可能はない』との実証を世界に示された!」
伸一と議長との友誼の絆は固く結ばれた。