明年、開港150周年の新潟港。日米修好通商条約に基づく開港5港として、函館・横浜・神戸・長崎と共に世界へ開かれた▼明治中期、新潟に生まれたロシア文学者・原久一郎も世界に目を向けた一人だった。けんか好きの野球少年だった新発田中学時代、恩師から薦められたトルストイの大著『復活』を読み、人生が変わった▼50歳の時、原は日本で初めてトルストイ全集の個人訳を完成させる。原稿用紙で3万2000枚に及ぶ労作業の中、インドのガンジーから励ましの書簡が届いたことも。日本におけるロシア文学翻訳の一時代を築いた▼原が訳したトルストイの言葉に「すべての人の畢生の事業は、時々刻々よりよき人になる事である」(『人生の道』岩波書店)と。人間の内面における変革こそ最も難しく、最も重要であるという文豪の晩年の叫びだ▼今夏、池田先生は小説『新・人間革命』の仕上げの筆を執った。「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」との主題の通り、一人の踏み出す挑戦の一歩には、世界を変える力がある。トルストイは同書でこうも言う。「もしも諸君がただ今善事をなし得るならば、絶対にそれを延期してはならない」(勢)