記念講演で山本伸一は提起した。
――これまで安全保障といえば、機構、制度の問題として論じられがちであった。しかし、社会及び国家の外的条件を整えることのみに走り、人間自身の変革という根本の一点を避けてしまえば、平和への努力のはずが、かえって逆効果になってしまう場合さえあるというのが、二十世紀の教訓ではないか――と。
そして、人間革命から社会の変革を志向すべきであるとし、そのためにも、「知識から智慧へ」「一様性から多様性へ」「国家主権から人間主権へ」、人類的な発想の転換が不可欠であることを訴えたのである。
この会場で伸一は、ハーバード大学のジョン・モンゴメリー博士、ハワイ大学名誉教授のグレン・ペイジ博士、平和学の創始者ヨハン・ガルトゥング博士らと再会している。
ハワイで彼は、国連創設五十周年を記念する第十三回世界青年平和文化祭や、SGI環太平洋文化・平和会議などに臨み、二月二日に、その足で関西入りした。
関西では、阪神・淡路大震災の東京・関西合同対策会議や追善勤行法要等に出席し、激励に全力を尽くした。法要で伸一は訴えた。
「関西の一日も早い復興を祈っています。全世界が、皆様の行動を見守っています。『世界の模範』の関西として、勇んで立っていただきたい。亡くなられた方々も、すぐに常勝の陣列に戻ってこられる。
御書には『滞り無く上上品の寂光の往生を遂げ須臾の間に九界生死の夢の中に還り来って』(五七四ページ)と仰せです。最高の寂光世界(仏界)への往生を遂げ、死後も、すぐに九界のこの世界へと生まれてこられる。そして、また広宣流布に活躍されるんです。
私どもは、亡くなられた方々の分まで、明るく、希望をもって、高らかに妙法を唱えながら進んでまいりたい。それが即、生死不二で、兵庫の国土に、関西の大地に、今再びの大福運の威光勢力を増していくからです。
被災地のすべての方々に、くれぐれも、またくれぐれも、よろしくお伝えください」