小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 百三十四 2018年9月3日

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法悟空 内田健一郎 画 (6464)

山本伸一の激励行は香港へ移った。これが二十世紀の世界旅の掉尾となる。
十二月四日、香港SGI総合文化センターで行われた、香港・マカオの最高協議会に出席した彼は、今回で香港訪問が二十回目となることを記念し、一句を贈った。
「二十回 香港広布に 万歳を」
そして、一九六一年(昭和三十六年)一月からの香港訪問の思い出をたどりながら、広布草創の功労者の一人である故・周志剛の奮闘を紹介した。
「周さんは、シンガポール、マレーシアなどに点在する同志の激励のために、数日に一回の割合で手紙を書き送った。手紙は、何か問題が生じれば、二日に一回となり、時には連日となることもあったといいます。
貿易会社の社長としての仕事も多忙ななか、香港広布の中心者として活動し、さらに、アジアの友に激励の手紙を書き続けることは、どれほどの労作業であったことか。しかも、その分量は、四百字詰め原稿用紙にして、五枚分、十枚分に相当することも珍しくなかった」
当時は、電話も普及しておらず、インターネットが発達しているわけでもない。身を削る思いで励ましを重ね続けたのである。
「ある地域の中心者への手紙には、『メンバーと、心から話し合える機会を多くつくることです。それができるのは家庭訪問以外にありません。これによって、同志と心やすく話し合え、密接なつながりもでき、相互の信頼も増すのです。これは、言うは易いが、実行は大変なことです』とあります」
人体も血が通わなければ機能しなくなる。組織も同じであろう。学会の組織に信心の血を、人間の真心を通わせるのは、家庭訪問、個人指導である。それがあるからこそ、創価学会は人間主義の組織として発展し続けてきた。一人ひとりを心から大切にし、親身になって、地道な対話と激励を重ねていく――それこそが、未来永遠に、個人も、組織も、新しい飛躍を遂げていく要諦にほかならない。