各地で梅雨入りが発表されている。日々の生活を想像すると、“うっとうしい季節”と思いがちだが、農作物など植物にとっては、かけがえのない“恵みの雨”。そう視点を変えれば、気持ちも軽くなる▼「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」――ぎょっとする言葉は、ある新聞広告コンテストの受賞作品。「桃太郎」という誰もが知る昔話を“成敗された鬼の子ども”の立場から捉え直したものである。言われてみればその通りだが、なかなか思い付かない▼ならば、桃太郎も鬼も“めでたしめでたし”になる別の結末もあるのでは――岡山県の中学校では、「視点を変える」をテーマに、いわば「新・桃太郎」を創作する授業がある。生徒からは「農業を教えれば、鬼は村を襲う必要がなくなる。だから、桃太郎が農機具を持っていく」などユニークな発想が次々に生まれるという▼一度確立され、慣れっこになった物の見方を変えることは容易ではない。それを変えてみるきっかけの一つが、他者との対話ではないか▼こちらの思いをぶつけるだけでなく、相手の話をじっくり聴いてみる。そこで得た新たな気付きが、自身の境涯革命の出発点にもなる。新たな視点の獲得――ここに対話の醍醐味がある。(子)