小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 雌伏 四十一 2017年5月12日

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法悟空 内田健一郎 画 (6069)

今回の第三回鼓笛隊総会では、壮年・婦人・男子・女子部の合唱団が一体となって交響詩「民衆」を歌い上げた。まさに多様な民衆が力を合わせ、凱歌を轟かせていったのだ。
山本伸一は、詩「民衆」に綴っている。

科学も 哲学も
芸術も 宗教も
あらゆるものは
民衆に赴くものでなければならない

君のいない科学は冷酷――
君のいない哲学は不毛――
君のいない芸術は空虚――
君のいない宗教は無慙――

君を睥睨する者どもは
脚下にするがよい……

伸一は、交響詩を聴きながら、学会が担っている使命の意味を、深く嚙み締めていた。
“あらゆる権力の軛から、そして、宿命の鉄鎖から民衆を解放する――それが創価学会の使命だ! それがわれらの人間主義だ! 私は戦う! 断じて戦う! 民衆のため、広布のために。そして、何があっても民衆を守り抜き、民衆の時代を開いてみせる!”
鼓笛隊総会はフィナーレとなった。メンバーが場内通路をパレードし、全出演者が舞台に上がり、「平和の天使」を大合唱する。

平和の天使 鼓笛の同志よ……

熱唱する乙女らの頰に感涙が光っていた。それは、清らかな青春の魂の結晶であった。
伸一は、あいさつの要請を受けていた。彼も、メンバーの健気な努力と精進に、御礼と感謝の励ましの言葉をかけたかった。
観客席でマイクを手にして立ち上がった。歓声と雷鳴のような拍手が起こった。
「大変に美しく、立派な演技であり、見事な総会でした。感動いたしました!」