仏典「テーラガーター」に、スニータという当時のインドで最下層生まれの男が登場する。“ごみ掃除”を仕事とし、蔑まれながら生活していた▼彼はある日、釈尊の姿を見つけるや、近づいて弟子入りを願い出る。仏は最高の敬語で“いらっしゃい。修行者よ”と歓待した。師の教えを貫いたスニータは悟りを得る。すると帝釈天と梵天が現れ、彼に合掌して言った。「生まれ良き人、あなたに敬礼します。最上の人、あなたに敬礼します」▼宗教には血筋も身分も関係ない。法を求める人は誰もが平等に修行者だ。仏の心をわが心として仏道を歩み続けた人こそが「真の生まれ良き人」であり、「最も尊い人」と見るのが仏法の真髄である▼法華経に説かれる不軽菩薩も、縁した全ての人を敬い礼拝した。日蓮大聖人は「不軽菩薩が人を敬ったことには、どのような意味があるのだろうか」(御書1174ページ、通解)と、よく考えるよう門下に呼び掛けられている▼どんな人をも敬う。それを言うは易く、実践することは難しい。だからこそ、あえて行きにくい人の所へ行き、胸襟を開いて語り、自らの境涯を高めていく「人間革命」の不断の挑戦が必要なのだ。仏法の目的は「人の振る舞いを示すこと」(同)にある。(恭)