慈悲に満ちあふれた万人の教本
約半世紀――これほど長きに渡って小説を書き続けるということが、どれほどの偉業であり、深い決意を要することでしょうか。“必ずや師匠の正義を宣揚してみせる”“一人の人間の持つ偉大な力に目覚めさせる”との、すさまじい気迫と覚悟を感じずにはいられません。
想像を絶する激闘の中で世界に平和の光を放ち続けたペンの大闘争に、ただただ敬服するばかりです。
この小説は、「師弟」「使命」「平等」など、人生における重要な精神が、あらゆる角度から丁寧に記されており、まさに“万人の教本”として人類史に残る名著であると確信いたします。
何より私が感じているのは、一貫して慈悲に満ちあふれた小説であることです。ページを開けば、名もない一人の会員を全身全霊で激励されるシーンがいくつも出てきます。
“目の前にいる苦悩の人を救わずにはおくものか”との熱烈な慈悲。その言葉一つ一つが、どれほど多くの読者の心を揺さぶり、勇気と希望の灯をともしたことでしょうか。私も、これまで池田先生と2度の出会いを刻み、その人徳と慈悲の深さを肌身で感じてきた一人です。
徹して一人の苦悩に寄り添い、励まし、偉大な使命に目覚めさせていく――その慈悲の行動を貫き通してきた先生の偉大さは、小説を読むほどに、深く胸に迫ります。
さらに先生は、“文化交流を通じて、世界平和に貢献する”との信念で民音(民主音楽協会)を創立され、世界的な文化運動を展開されてきました。
その着想は、どこまでも人間という原点に立ち返ったところから始まったのだと思います。
文化には、人種や国境といったあらゆる隔たりを超え、全ての人の心を結ぶ力があります。それは映画も同じです。
今、4Kや8K(高精細・高画質な映像規格)、VR(仮想現実)などの最新技術によってデジタル化が進み、人間の目をも超えた映像を映し出せるようになりました。
しかし、いかに技術が進歩したとしても、見失ってはならないのが“人間の探求”です。その時代や精神を映し出す映画が、人間をどう描き出すか。映画産業は技術先行ではなく、人間を描くために、どう技術を生かすのかという視点を決して忘れてはならないと感じています。
その“人間根本”の哲学を、絶えず発信し続けているのが池田先生であり、小説『人間革命』『新・人間革命』であります。
人間根本の精神を、私も自分の立場で後世に伝え残していきたい。先生の哲学の輝きは、どんなに時代が変わっても永遠に色あせることはないでしょう。