小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 百七 2018年8月1日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6437)

 山本伸一は、大統領との会見に続いて、パラグアイの外務省を訪れた。同国の「国家功労大十字勲章」の授章式に出席するためである。授章式であいさつに立った外相は、伸一の平和行動に言及し、こう語った。
「誠実な『対話』を通してのみ、差別をなくし、地球規模での恒久平和と相互理解が得られるとの信条による、会長の平和への戦いは、人類の規範です」
さらに、この二十二日には、パラグアイ国立アスンシオン大学から伸一に、哲学部名誉博士号が贈られ、その授与式に出席した。
そして、二十三日夕、彼は、次の訪問地のチリへと向かったのである。
「天も地も 川の流れも 仏土かと
地涌の菩薩の 君たち忘れじ」
彼がパラグアイの友に贈った和歌である。

パラグアイを発った搭乗機は、アンデス上空を飛行していった。眼下に広がる山々の残雪が、夕映えのなかで、黄金に輝いていた。
チリは、伸一にとって、ちょうど五十カ国目の訪問国となる。思えば、どの国も、一つ、また一つと、全精魂を注いで歴史の扉を開く、真剣勝負の広布旅であった。
戸田城聖は、第二代会長に就任した翌一九五二年(昭和二十七年)の正月、「いざ往かん 月氏の果まで 妙法を 拡むる旅に 心勇みて」と詠んだ。また、生涯の幕を閉じる十日ほど前、伸一を枕元に呼び、メキシコに行った夢を見たと語った。
「待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな。行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に……」――そして、命を振り絞るようにして言うのであった。
「君の本当の舞台は世界だよ」「うんと生きるんだぞ。そして、世界に征くんだ」
戸田の心は、全世界の民衆の幸福にあり、世界広布にあった。しかし、恩師は、一度も海外に出ることはなかった。伸一は、戸田の言葉を遺言として生命に刻み、師に代わって世界を回り、「太陽の仏法」を伝えてきた。