法悟空 内田健一郎 画 (6381)
一九九〇年(平成二年)夏、総本山では、学会の青年たちが、九月二日に行われる大石寺開創七百年慶祝記念文化祭の準備に、連日、汗を流していた。この文化祭は、開創七百年の記念行事の幕開けとなるもので、十月には、慶讃大法要の初会、本会が営まれる。
九月二日夕刻、慶祝記念文化祭が、「天座に輝け 幸の光彩」をテーマに掲げ、総本山・大客殿前の広場で盛大に開催された。
宗門からは、日顕をはじめ、総監などの役僧、多数の僧らが、学会からは、名誉会長である山本伸一、会長の秋月英介、理事長の森川一正のほか、副会長らが出席した。
文化祭では、芸術部、男女青年部による、邦楽演奏や優雅な寿ぎの舞、バレエなど、熱演が繰り広げられた。
また、色とりどりの民族衣装に身を包んだ、世界六十七カ国・地域のメンバーが誇らかにパレードすると、会場からは大拍手が鳴りやまなかった。
世界広布への誓いを胸に、満面の笑みで手を振る、メンバーの清らかな思いに応えようと、伸一も力いっぱい拍手を送った。
隣には、日顕も、笑みを浮かべて演技を観賞していた。
この年の十二月――宗門による、伸一と会員とを分離させ、学会を破壊しようとする陰謀が実行されることになるとは、誰も想像さえしなかった。
慶祝記念文化祭を終えた伸一には、第五回日中民間人会議に出席するために来日した中国代表団との交歓会、第十二回SGI総会のほか、ブラジルのサンパウロ美術館の館長や国連事務次長、インドの文化団体ICDO(国際文化開発協会)の創立者らとの会談などが、連日、控えていた。
日蓮大聖人は「日は東より出づ日本の仏法の月氏へかへるべき瑞相なり」(御書五八九ページ)と、世界広宣流布即世界平和を展望されている。その実現の流れを開くために、伸一は懸命に奮闘を重ねていた。彼にとっては、毎日が、平和建設への大切な歩みであった。