小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 誓願 二十四 2018年4月23日

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 法悟空 内田健一郎 画 (6354)

 山本伸一は、一九七四年(昭和四十九年)にもブラジル訪問を予定していたが、ビザ(査証)が出ず、実現できずに終わった。ブラジルの同志は、自分たちの力が及ばぬために、学会への誤解を晴らせなかったことを悔やんだ。“さらに、さらに、学会理解のための対話と社会貢献に努め、ブラジル政府の方から山本先生の訪問を強く求める時代をつくるのだ!”と、皆が深く心に誓った。
不屈の魂は、辛酸の泥土の中で勝因を育む。
そして、遂に、八四年(同五十九年)二月のブラジル訪問となり、フィゲイレド大統領との会見となったのである。
席上、大統領から、同年五月末か六月初めの訪日の予定が伝えられたほか、日伯の技術協力や民政移管の推移、核問題と未来展望などが語り合われた。なかでも、各国首脳による話し合いこそ、世界不戦への道であるとの伸一の主張に、大統領は全面的に賛同した。
ブラジリアでは、外相、教育・文化相らとも会談し、六百人のメンバーと記念撮影をした。また、ブラジリア大学を訪問し、図書贈呈式にも出席している。
二月二十五日には、第一回ブラジル大文化祭の公開リハーサルが行われていた、サンパウロ州立総合スポーツセンターのイビラプエラ体育館を訪れた。大歓呼のなか、伸一は両手を上げながら、中央の広い円形舞台を一周したあと、万感の思いを込めてマイクを握った。
「十八年ぶりに、尊い仏の使いであられるわが友と、このように晴れがましくお会いできて、本当に嬉しい。この偉大なる大文化祭が、ブラジルの歴史に、広布の歴史に、燦然と輝き残るであろうことは間違いありません。
しかし、これまでに、どれほどの労苦と、たくましき前進と、美しい心と心の連携があったことか。私は、お一人お一人を抱擁し、握手する思いで、感謝を込め、涙をもって、皆さんを賞讃したいのであります」
大歓声があがり、ブラジルの勝ち鬨ともいうべき、意気盛んな掛け声がこだました。
「エ・ピケ、エ・ピケ、エ・ピケ……」