冬の訪れを告げる木枯らし1号が東京で観測されなかったのは、1979年以来、39年ぶりだという。
欧州青年部誓願研修会の初日となった11月30日の都内も、空が青く澄み渡り、柔らかな日差しが降り注ぐ小春日和に包まれた。
時ならぬ暖かさをもたらしたのは、この120人の青年たちではないか? そんな“冗談”が歓迎に当たった日本の同志の間で交わされるほど、新宿区の金舞会館(創価文化センター内)で行われた研修会開講式は、欧州の友一人一人の情熱がたぎっていた。
「アイルランド!」
「セルビア!」……
欧州青年委員会のオザワ委員長が参加国を一つ一つ読み上げていく。
該当のメンバーが次々と立ち上がり、笑顔で手を振る。拳を突き上げて喜びを爆発させる友もいた。互いをたたえ合う拍手と歓声が次第に大きくなっていく。民族や文化等のあらゆる差異を超えて、心一つに前進しゆく欧州の友の絆の強さを象徴する光景だった。
今回の研修会への参加を希望した友は、全部で1036人。選ばれた120人は小説『新・人間革命』の「福光」「誓願」の章を学び深めながら、弘教に挑戦し抜いてきた。経済苦や職場での人間関係など、さまざまな困難を乗り越えて来日したメンバーたちだ。
開講式に続いて、欧州青年部は同日午後、広宣流布大誓堂での誓願勤行会に参加。長谷川理事長が遠来の同志を心からたたえた。
厳かに勤行が始まった。合掌し、御本尊を真っすぐに見つめる欧州の友の瞳に強い光が宿る。日本と時差8時間前後の欧州各国においても、研修会に参加できなかったメンバーたちが、誓願勤行会とタイミングを合わせて自宅の御本尊の前に座ったという。そのことを来日した同志も知っているがゆえに、唱題の声にも自然と力がこもっていく。
“池田先生の心を真剣に学び抜こう。私たちの帰りを待っている同志のため、欧州の未来のために!”
12月1日、欧州のメンバーは東北を訪問。6県11会場に分かれて交流交歓会を行った。
あるグループは岩手・大船渡文化会館での交歓会に先立ち、東日本大震災で甚大な津波被害を受けた陸前高田市へ。震災時、学会の救援拠点となった高橋香代さん(支部副婦人部長)宅を訪れ、地元の同志30人と語らうためである。
今野眞津美さん(県副婦人部長)が時折、声を詰まらせながらも、震災当時の様子や復興への思いを語った。「師匠や同志と共に広布に生きた思い出は、絶対に消えることのない“心の財”だと実感します」
欧州の友の目にも涙があふれる。今野さんが“広布の理想郷を陸前高田に築きたい”との真情を語ると、欧州の同志はスタンディングオベーションで応えた。さらに一人一人が日本の同志のもとへ駆け寄り、片言の日本語で、精いっぱいの思いを伝える。
デンマークの同志は語った。「いまだ復興の途上で大変な状況にありながら、他者に温かく接する、陸前高田の同志の姿に胸を打たれました。私も、同志を包み込んでいけるような自分に成長したい」
翌2日、欧州青年部は仙台市の東北文化会館に隣接する東北国際女性会館へ。館内の常設展示「東北福光みらい館」を見学した。同館では震災からの復興に立ち上がった東北の同志と池田先生の絆などを、映像やパネル等で紹介している。
欧州のメンバーは、ガイドによる展示の説明を聞き漏らすまいと、必死に耳を傾けていた。思いがあふれてしまい、目頭を抑えるためにメモを取る手が何度も止まりながらも、懸命にノートにペンを走らせ続ける友の姿も。
イタリアのある同志は、東北で過ごした2日間を振り返り、力強く語った。
「イタリアでも2016年に大地震があり、移住を余儀なくされたメンバーがいます。信心根本に立ち上がる東北の同志の姿を、母国の皆に伝えていきます」
研修会中、東北以外の各地でも、交流が活発に行われた。
11月30日夜、欧州の友は東京・東大和市の創価青年音楽センターへ。日本の音楽隊・鼓笛隊による交流コンサートに参加した。
「ようこそ、日本へ!」――“広布の楽雄”と“平和の天使”たちが歓迎の心を込めて、迫力の演奏・演技を繰り広げる。その一挙手一投足に欧州メンバーは息をのみ、喝采を送った。
佐藤光一さんが、信心と音楽隊での活動を根本に、病魔に打ち勝った体験を発表。朗らかに前進する佐藤さんの不屈の姿に、惜しみない拍手が送られた。
全員で学会歌「誓いの青年よ」を大合唱。感動を届けてくれた返礼にと、欧州の友が愛唱歌「欧州の青年よ 光り輝け!」を高らかに歌い上げると、会場の熱気は最高潮に達した。
「ワン・ヨーロッパ! ウィズ・センセイ!(欧州は一つ! センセイと共に!)」――欧州の友の合言葉に、日本の友も声を重ねていく。“世界広布を進めていこう!”との心で一つになった瞬間だった。
また、欧州の友は今月3日、横浜市の神奈川文化会館を訪問。同会館は、池田先生が第3代会長を辞任した直後に、大海原を望みながら、世界広布の新航路を開こうと“反転攻勢”の戦いを開始した舞台である。
欧州の青年たちは同会館に刻まれた「正義」と「共戦」の歴史を学び、師弟の魂を受け継ぐことを約し合った。
続いて同会館で行われた修了式で、欧州青年委員会のアドバイザーであるスウェーデンのシュピューラー女子部長が、皆に呼び掛けた。
「これから母国に戻った私たちには、厳しい現実との戦いが待っていることでしょう。しかし、だからこそ、困難に直面した時には、今回の研修会中に師匠・池田先生に誓ったことを、思い出そうではありませんか!」
心からの賛同を示すかのように、皆が大きくうなずく。誰もが、ヨーロッパ新時代を開く主体者であるとの使命に燃えていた。
スイスの友が感動の面持ちで語った。「研修会中、いつでもどこでも、池田先生の真心を感じました。今度は私が母国の一人一人に励ましを送り、師の思いを伝えていきたい」
メンバーは研修会を締めくくる記念撮影に臨んだ。「従藍而青(青は藍より出でて、而も藍より青し)」を思わせる青のTシャツを、皆が身にまとっている。
カメラのファインダーが欧州の友の晴れやかな笑顔を捉えた。一人一人の胸に躍る「VOW(誓願)」の文字が、翼を広げて大空へと飛翔しゆく若鷲のように見えた。