人形浄瑠璃文楽の人間国宝、故・竹本住大夫さん。引退後、後進が新作に挑戦する舞台を見に行った。芝居の雰囲気はいいものの、肝心の「語り」が聞き取れず、出来は今一つ▼古典芸能の新作といえば“従来の型を破った新たな試み”という先入観があるかもしれない。しかし竹本さんは強調する。「新作ほど、経験豊かな何もかも心得たベテランが関わって、最初の型を作って示すべきです」(『人間、やっぱり情でんなぁ』文春文庫)▼竹本さんは生前、“文楽の鬼”と呼ばれた。弟子への厳しい稽古ゆえである。同時に、「一生やっても報われんでも、やると決めていくのが修業」と自身も芸を求め抜き、生涯、手本であり続けた▼御書に「兵者を打つ刻に弱兵を先んずれば強敵倍力を得る」(37ページ)と。戦いに際して弱い兵を先に向かわせれば、敵は一段と勢いを増してしまう――勝負の要諦を示した御文である。広布の現場においても、先陣を切って範を示すリーダーほど心強い存在はない▼下半期が始まり、全国の同志が新たな前進を開始した。その要となるのは経験と実力を兼ね備えた熟練のリーダー。“仏道修行に終わりなし”と、わが広布と人生の勝利へ挑み続ける先輩がいてこそ、後輩も勇んで新たな挑戦を開始することができる。(値)