人格光る人間王者の道を
寮生の発意により、開学2年目の1972年に始まった「滝山祭」。その後、大学建設を担う学生主体の行事として発展し、94年まで開催された。創立者・池田先生はその多くに出席し、励ましを送ってきた。第18回の滝山祭記念フェスティバル(89年7月8日)では、学生の熱演を温かく見守り、スピーチ。正義の信念を貫いた恩師・戸田先生の生涯や自身の決心を通し、使命に生き抜く人生の大切さを訴えた。
自分の置かれた場所で、信念に徹して生きた人と同じく、諸君も、この創大の世界で、学問に真剣に取り組み、学問に生きぬいていただきたい。それが現在の諸君の最大の使命であります。
いかなる場所、いかなる相手であっても、堂々と自身の研鑽と思索の成果を発表し、納得させていく実力を身につけていただきたい。私のすべての行動は、そうした諸君の晴れ舞台を開くための戦いであります。
次いで先生は、イギリスのオックスフォード大学の歩みに言及。世界に冠たる学問の府となった同大学には、幾多の試練と苦難を乗り越えた偉大な歴史がある。とりわけ、18世紀には、入学希望者が減るなど、長期的な低迷の時代もあったという。だが、その中で、厳格に自分たちを律しながら、学問に取り組む一つの学寮があった。この寮からは、後に十数人の英国首相が誕生した。先生はこうした事実に触れ、何ものにも左右されない自分自身の建設をと呼び掛けている。
何事も、ゆるぎない基盤が簡単にできあがるはずはない。ありとあらゆる経験と試行錯誤を重ね、苦しみ、あるときは攻撃を受け、揺さぶられ、失敗もし、それら一切に耐えながら、なお理想に向かって歩みとおしたとき、初めて、永遠性を持った盤石な建設がなされる。ゆえに、すべての出来事は、よりすばらしき勝利への貴重な教訓であり、より力強い前進への糧となる。また、そうなしえたところが、最後の、真の勝者となるのであります。
“学び”の心は強い。それは精神の停滞を許さない。どこか一カ所にでも、だれか一人にでも、その心が貫かれていくならば、純粋にして尊き精神の伝統は守りぬくことができる。
逆に、いたずらに世間の風潮に振りまわされ、低次元の現象や言葉に心を同調させてしまったならば、それはもはや求道者ではない。信念の人ではない――このことを、私は恩師戸田先生から、まことに厳しく教えられた。
ゆえに私は、どんな悪意や無認識の中傷にも振りまわされない。だれが、どのように言おうが、どのように見ようが、それは自由です。初めから相手にする必要もない。真実の自分は自分自身のなかに確固としてあり、何ものも永久にそれを覆すことはできないからであります。
滝山寮をはじめとする創価大学、女子短期大学の各寮から、よき伝統に培われた優秀な人材が、陸続と社会に巣立っていかれんことを念願してやみません。
オックスフォード大学には学寮の用務員として学生を支えた、無名の一市民を顕彰する銘板が刻まれている。最後に先生は、創大の発展に尽くす陰の功労者への感謝を忘れず、“人格の芯”を培い、より多くの人々を助け、幸福にする“王者”にと期待した。
新時代の王者をめざす諸君は、学問を深め、みずからに力をたくわえつつ、人々に尽くしきっていく「人間王者」へと成長していただきたい。
大切な一生を勝ち、飾りゆくために、諸君は、自分で自分を立派に仕上げていっていただきたい。そのための学問であり、人間修行であることを、重ねて申し上げておきたい。