小説「新・人間革命」

〈小説「新・人間革命」〉 大山 三十九 2017年2月17日

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 法悟空 内田健一郎 画 (5999)

 未来を展望する時、社会も、学会も、ますます多様化していくにちがいない。したがって、山本伸一は、これまで以上に、さまざまな意見を汲み上げ、合議による集団指導体制によって学会を牽引していくべきであると考えていた。もちろん会長はその要となるが、執行部が、しっかりとスクラムを組み、力を合わせ進んでいくことを構想していたのだ。
また、彼の組織像は、全同志が会長の自覚に立って、互いに団結し合い、活動を推進していくというものであった。
理事長の十条潔は話を続けた。
「山本先生は、ご自分でなくとも、会長職が務まるように、制度的にも、さまざまな手を打たれてきたのであります。
先生は、以前から、私たちに、よく、こう言われておりました。
『私がいる間はよいが、私がいなくなったら、学会は大変なことになるだろう。だから今のうちに手を打っておきたい。いつまでも私が会長をやるのではなく、近い将来、会長を交代し、次の会長を見守り、育てていかなければならない』
また、『君たちは、目先のことしか考えないが、私は未来を見すえて、次の手を打っているんだ』とも言われております。
その先生が、今回、『七つの鐘』の終了という歴史の区切りを見極められ、会長辞任を表明されたのであります」
この瞬間、誰もが息をのんだ。耳を疑う人もいた。愕然とした顔で十条を見つめる人もいれば、目に涙を浮かべる人もいた。
十条も万感の思いが込み上げ、胸が詰まったが、自らを励まし、言葉をついだ。
「先生は、『次の創価学会の安定と継続と発展のために、新しい体制と人事で出発すべきである』と言われ、熟慮の末に会長勇退を決意されたのであります」
弟子のために道を開くのが師である。そして、その師が開いた道を大きく広げ、延ばしていってこそ、真の弟子なのである。この広布の継承のなかに真実の師弟がある。