法悟空 内田健一郎 画 (6351)
日蓮大聖人がめざされたのは、苦悩にあえいできた民衆の幸せであった。そして、日本一国の広宣流布にとどまらず、「一閻浮提広宣流布」すなわち世界広布という、全人類の幸福と平和を目的とされた。この御精神に立ち返るならば、おのずから人類の共存共栄や、人類益の追求という思想が生まれる。
世界が米ソによって二分され、東西両陣営の対立が激化していた一九五二年(昭和二十七年)二月、戸田城聖が放った「地球民族主義」の叫びも、仏法思想の発露である。
仏法を実践する創価の同志には、誰の生命も尊く、平等であり、皆が幸せになる権利があるとの生き方の哲学がある。友の不幸を見れば同苦し、幸せになってほしいと願い、励ます、慈悲の行動がある。この考え方、生き方への共感の広がりこそが、世界を結ぶ、確たる草の根の平和運動となる。
――一九八二年(昭和五十七年)四月、南大西洋のフォークランド諸島(マルビナス諸島)の領有をめぐって、イギリスとアルゼンチンの間で戦争が起こった。
フォークランド諸島を舞台に、戦闘が続いたが、六月半ばアルゼンチン軍が降伏し、戦いは終わった。しかし、両国の国交が回復するのは、九〇年(平成二年)二月である。この戦争では、両軍で九百人を超える戦死者が出ている。
イギリスとアルゼンチンのSGIの理事長らは、日本での研修会などを通して知り合っていた。国と国とが戦火を交え、両国の人びとも互いに憎悪を募らせていくなかで、SGIメンバーは、平和を願って唱題を開始した。互いに相手の国の同志を思い浮かべ、戦争の終結を懸命に祈った。
アメリカの社会運動家として知られるエレノア・ルーズベルトは訴えている。
「この世界で平和を実現するには、まず、個人と個人との間の理解を築かなければなりません。それが萌芽となって、集団と集団とのより良い相互理解も生まれるのです」(注)
平和の礎は、人間と人間の信頼にある。
小説『新・人間革命』の引用文献
注 Eleanor Roosevelt著『This Troubled World』H. C. Kinsey & Company, Inc.