正月によく耳にする箏と尺八による「春の海」。作曲した宮城道雄氏は、十七絃や八十絃などの新楽器の考案や洋楽を取り入れた箏曲の作品を発表するなど、邦楽の発展に多大な業績を残した▼氏は幼少期に失明した。音楽は、光を失い、絶望に沈む宮城少年の希望の灯となった。目が見えない以上、音の世界で生きる――箏の稽古を積み重ねる中で、そう決めた。氏は述べている。「ただ驀然にこの道を進んで往こう。その一念が私を今日あらしめてくれた」(『新編 春の海』岩波文庫)▼一人の人間の生命には、無限の可能性が秘められている。その力を発揮させるのが、「強靱な一念」だ。不退の覚悟を定めた人は強い。どんな苦難も自らを飛躍させる力に変えることができる▼池田先生はかつて、全盲の箏曲家の女性を励ました。「“信心の眼”を、“心の眼”を開いて、強く生き抜いていくんです。あなたがそうなれば、みんなが希望を、勇気を感じます」。師の励ましから半世紀以上が経過した今も、彼女は箏曲を通して、自分の縁する人に生きる勇気を届けている▼音楽を創造するのも、勝利の人生を切り開くのも「心」。自らが決めた使命の大道をまっしぐらに進む――この誓いを貫く一日一日でありたい。(銘)