内なる世界に船出するパイオニアは、まさに妙法を持った諸君をおいて、他にはありえない。妙法こそ、生命という、内なる未知の世界を照らす光明であり、羅針盤であり、誤りなき海図である。内なる宇宙、生命の世界の主人公となった時、人間は、貪・瞋・癡の三毒の支配を打ち破って、真実の幸福と平和を手にすることができるのである。外なる世界だけの繁栄は、根のない草木に等しい。生命哲学によって、内なる世界に根を下ろしてはじめて、尽きない繁栄が現実のものとなるのである。この人間の、実像の栄光の建設こそ生命の世紀、二十一世紀へのパイオニアたる諸君の使命であることを自覚してほしい。
私たちの生命のなかにあるものは、たんに理性とか、物質的豊かさを希求する衝動だけではない。むしろ、これらの心的機能は、宇宙大の広がりをもつ生命の大海の表層に浮かぶ波しずくのようなものと考えられよう。こうした欲望や理性の奥には、家族、隣人、民族、人類をも包み込んで、万物へとおもむく深い情愛もあれば、自然美に激動する心情もある。さらに、あらゆる人々の生命の底流には、宇宙そのものと共鳴しつつ、宇宙新羅万象の生死をささえる慈悲と英知の本源的エネルギーがたたえられているのである。一人の人間の生の内奥からわきだす慈悲に満ちた聡明な知恵は、殺伐とした現代砂漠をうるおすばかりでなく、他者の生命を開くための触媒の役目を見事に果たしていくのではないかと私は信ずる。