おまえは江戸っ子で、お人好しで、気前がいい。いつも、自分を犠牲にしてまで皆によくしてあげたい、との心でいる。しかし、人間は、皆、お前と同じ心ではないよ。牧口先生は”人間というものは、自分が何かしてあげたことは覚えていても、自分がしてもらったことは忘れるものだ”といわれていた。お前がいくら自分を犠牲にし、大勢の人によくしてあげても、残念なことだが相手は全部忘れるものと思っていきなさい。そうでないと、長い人生にあって、本当に人間の世界は、こんなにも不知恩で、無残で、裏切りが多く、真心が通じないものかと、慨嘆することになるだろう。
本当の偉さとは、たとえ人にしてあげたことは忘れても、してもらったことは一生涯忘れないで、その恩を返していこうとすることだ。そこに仏法の光がある。また人格の輝きがあり、人間の深さ、大きさ、味わいがある。
人を決して身なりで判断してはならない。その人が将来、どうなるか、どんな使命をもった人か、身なりなんかで絶対に判断がつくはずがない。我が家では、身なりで人を判断することだけは、してはいけない。
母親はガミガミ年中叱っていてもよいが、父親は黙っていてもこわいものであるから、友達のようになってあげることだ。けっして叱ってはいけない。