宗教の誤りほど恐ろしいものはない。知らずしらずのうちに、生命の奥深く入りこんでいく。しかも、いったん、そこに住所を構えるや、根強く、そこに永住し、その人の清浄な生命をおおいかくす。さらに生命力を弱め、あるいは貧瞋癡の三悪道、四悪趣の働きを増し、正常な思考能力を狂わし、正しい生活のリズムを破壊し、やがて奈落の底へ突き落とすのである。
それは、あたかも病原菌にもたとえられる。ただし、病原菌は、たんにその人の今世の肉体を破壊していくのみである。
誤まれる宗教・哲学は「法身の慧命を破す」とあるごとく、三世にわたって連続しゆく、生命の本源まで食い入り、これを破壊し、永遠に幸福を享受することのできない生命へとぬりかえてしまうのである。
しかも、人は、自身の不幸の原因を、決して、この病原菌にあることに気づくことができないのである。さらに、あたかも水中の月をとらんとするがごとく、そこに幸福の幻影を求めて、はかない望みを託すのであるから、まことにかわいそうな限りであり、恐ろしい限りである。それほど深く信じていなくとも、いつの間にか、執情となって、当人の心を支配する。いわんや、真剣に、そこに真実の法を求めている人には、もはや動かしがたい頑命な心が形成されてしまうのも、当然のことといえる。